御挨拶
神経代謝病研究会は、神経と代謝の交差領域に位置する遺伝性疾患の理解と治療の進歩を目的として、2016年に発足いたしました。初期には、てんかんや発達障害などを呈する先天代謝異常症において、新たな治療法が次々と実用化され始めていた時期であり、本研究会は、小児神経科、先天代謝異常、脳神経内科、臨床遺伝、基礎医学などの専門家が集い、疾患を深く理解し、治療へつなげるための学術的交流の場としてスタートいたしました。
現在では、遺伝子治療、髄腔内酵素補充療法、血液脳関門通過型の酵素療法、分子標的治療、シャペロン治療、核酸医薬や間葉系幹細胞を用いた再生医療といった多様なモダリティが、臨床応用あるいは治験の段階に進みつつあります。また、疾患の早期発見を可能にする新たなバイオマーカー、スクリーニング技術、分子診断法の進展も目覚ましく、神経代謝病領域は、今や早期発見と治療法の選択が現実となる時代を迎えています。
本研究会は、こうした変化の中で、医療現場と基礎研究、創薬との橋渡しを担うトランスレーショナルリサーチの推進と、若手研究者や医師の育成を重要な使命と捉えています。診断技術や治療法が進歩する一方で、患者や家族がその恩恵を実際に受けられる体制づくり、支援の在り方についても、多職種・多領域による連携がますます求められております。
今後も、本研究会は、患者さんの未来を見据えた「研究と臨床の融合の場」として、参加者の皆様との活発な対話と協働を通じて、神経代謝病領域のさらなる発展に貢献してまいります。
皆様の温かいご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。
神経代謝病研究会
代表幹事 小坂 仁
自治医科大学小児科学